● 熊本での漱石

文豪夏目漱石は、明治29年、29才の時に、熊本の旧制第五高等学校(現在の熊本大学)の英語教師として赴任し、英国留学までの4年3カ月を熊本で過ごしました。
漱石が最初に熊本に降り立ったのは「池田停車場」(現在のJR上熊本駅)。
漱石は、この駅から人力車に乗って五高に向かう途中、熊本市内を見晴らすことのできる京町の新坂にさしかかった時、「ああ、熊本は森の都だなあ」とつぶやいたそうです。
このことから、熊本市は「森の都」と呼ばれるようになりました。
このほか漱石作品の「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ」という書き出しで知られる小説『草枕』や、登山をして道に迷う2人の会話が楽しい『二百十日』は、熊本時代のエピソードをもとに著されています。
このように、漱石文学の礎となったゆかりの地が、熊本には多く点在しています。