● 作家概要

夏目漱石は、1864年江戸牛込馬場下場町に名主の父、小兵衛直克とはは千枝の末子として生まれた。
本名は金之助で、生後まもなく里子に出され、2歳の時、塩原家の養子となるが、養父母の不仲のために9歳の時実家に戻る。
夏目の性に戻ったのは21歳の時。
大学卒業後、明治28年松山中学の教師として四国松山に赴任する。
ここが後の「坊ちゃん」の舞台となる。
明治33年から36年まで文部省の留学生として英国に渡り、その後は帝大英文科の講義に力を注ぐ。

明治40年東京朝日新聞社からの招きを受け、教官の職を捨て新聞小説虞美人草」を書いて大きな評判を受け、初期の3部作と言われる「三四朗」「それから」「門」を書き上げた。その「門」を書き上げた明治43年の夏、胃潰瘍となり、静養のために訪れた伊豆の修善寺温泉で血を吐き、意識不明に陥った。
懸命の看護によって一命は取り止めるが、生死を超える体験によって、漱石の人生観は揺れていく。
「こころ」で明治とともに生まれ育った「先生」を人間の罪と重ねて葬った漱石は、己の過去を暴いて克服するかのように「道草」を書き上げる。
その後、胃潰瘍悪化のため「明暗」は未完のまま大正5年12月9日、世を去った。