● 作品概略


  <<吾輩は猫である
生まれて間もなく捨てられた猫は、苦沙弥先生の家に住み込む。
人間は不徳なものだと車屋の黒から教えられた猫である吾輩は、人間を観察する。
主人の門下生の寒月、美学者の迷亭、詩人の東風などが来ては、太平楽を並べて語り、いろいろの人間模様が織りなされる長編小説である。
漱石の処女作。


  <<坊ちゃん>
単純、率直で江戸っ子の坊ちゃんは、四国松山の中学の数学教師になる。
坊ちゃんの奔放な言動は生徒や教師たちの間に事件を巻き起こす。
周囲の愚劣、無気力、悪知恵に反発し、先輩教師とともに、教頭に鉄拳制裁を加え、教職を投げうって東京に帰るという反俗精神にみちた名作。


  <<それから>
高等遊民である長井代助は、かつての恋人三千代を義挟心から友人平岡に譲ったが、その後も彼女への愛は深まっていく。
平岡夫妻は大阪で失敗して、3年を経て帰京し、今は夫妻の間には亀裂さへ生じている。
改めて彼女への愛を自覚した代助は、彼女に告白し、彼女も泣いてそれを受け入れる。
世間の道徳的批判を超えた個人主義的正義に主題をおいた恋愛小説で当時の知識人への典型を書いた作品。


  <<こころ>
大学を卒業した私のもとに先生から遺書が届く。
先生は学生時代、未亡人と美しいお嬢さんのいる下宿で生活しており、そこに困窮していた親友kを同居させる。
Kからお嬢さんへの恋を打ち明けられるが、先生はKを出し抜いて、奥さんからお嬢さんとの結婚の許しを得る。
それを知ってKは自殺してしまう。
結婚した先生は罪の意識に苦しみ、Kの心を深く理解して自殺を決意するという中編小説である。


  <<三四郎
大学にはいるために上京した小川三四郎にとって、すべてが驚きであった。
彼の周りに先輩野々宮、友人佐々木、広田先生、里見美禰子が現われ、三四郎は美禰子に心を奪われていく。
しかし彼女に女性の謎を感じさせられ、結局普通の結婚をするという新しい女性像と社会批判を描いた現実的な小説である。


  <<明暗>
晩年には事故の困難を乗り越え、それにうちかち、天に則ることに求めようとする人生態度「則天去私」、人間のエゴイズムをえぐり出しその克服を「則天去私」に求め、多くの可能性をもちながら作者の死によって未完に終わった。
会社員津田由雄と結婚半年のその妻お延を中心に人間のうぬぼれ、見栄などが渦巻いている様子を描く長編小説。