● 作家概略

川端康成

 川端康成明治32年(1899)、大阪府茨木市に生まれましたが、その幼年期は肉親を次々と失う孤独なものでした。
物事の神髄を見抜く冷厳な眼はこの生い立ちの中で形成され、その後の川端文学を特徴づけることとなりました。

 昭和2年(1927)、横光利一片岡鉄兵らと創刊した「文芸時代」に「伊豆の踊子」を発表、その清新な作品は川端の初期代表作となりました。
また「新感覚派」と呼ばれる作風で「浅草紅団」「禽獣」など、新進作家として旺盛な執筆活動を開始します。
そして昭和10年代には名作「雪国」が発表され、日本のあわれな美しさと、そこに生きる人々の繊細な心が揺らめきが多くの読者を魅了しました。

 京都が舞台となった「古都」もまた日本の伝統と自然を描いた作品といえます。
京の四季折々の行事と風物が織り込まれたこの作品は「日本の『ふるさと』をたずねる」という意図で執筆されました。
生活や心が荒廃しつつある現実の中、日本人の戻るべき「ふるさと」の姿を、この京都という地に見いだしたのでしょうか。